2012/12/28
明日が、そしてまた明日が、
これは、シェクスピアの「マクベス」に出てくる台詞の一節。
年末になると、このフレーズが浮かぶ。
原文は
Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow
Creep in this petty pace from day to day,
To the last syllable of recorded times;
明日が、そしてまた明日、そしてまた明日が・・・
時は小さな足どりで、一日一日と歩み
ついに、最後の一瞬に辿り着く・・・
歳をとると、
過ぎていく時の感覚に敏感になる。
そして、その速さに抗えないかと真剣に考えている自分がいる(笑)。
7月から始めた「きょうのまねきねこ」を読み返してみると、
今あることと過ぎていくこととが
幻灯機のように、いろいろな色彩に彩られながら
現われたり、消えたり・・・・
フェースの仲間たちや自然の移り変わりが、
時間の経糸を絡め取りながら
時間をタペストリーのように編んでいることが分かる。
で、
私は想うのだ。
時は決して、流れるようななめらかな肌触りではない。
凸凹、陰影の刻まれた布のような肌触りだ。
その流れは一定ではない(!)。
その速さを遅くすることは可能なのかもしれないと(!!)。
時の経糸に絡まる緯糸の日々のできごと、
これに深く、太く、密に、可能な限りの想いを注ぎ込めば
時のタペストリーは、より濃く、深い陰影をゆっくり宿していくだろうと。
年の暮れ、
そんな思いにかられながら、
毎年、挫折している一冊の本を取り上げる。
「ドン・キホーテ」
時に挑んだ、このご仁を私は尊敬する。
幸い、わがフェースにはキホーテに連なる仲間がたくさんいる。
せめて、彼らの背中を見ながら
来年もゆっくりあとをついていきたいと思うのだ。
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2012/12/25
生命のダンス
クリスマスなので音楽の話をしよう。
よく晴れた朝、
小沢征爾の指揮する水戸室内交響楽団定期演奏会のDVDを見た。
モーツアルト第35番「ハフナー」K385。
77歳になる指揮者の動きと表情の簡潔な美しさに、
老いるとは、若さだけでは到達することのできない高みにまで
いくことなのだと教えられる気がした。
目を閉じて、
小澤のハフナーを聴いていると、
青空の階梯とそこから射すように落ちてくる透明な光、
悲しさと諦念が生み出す、不思議な明るさ、
そんなものが浮かんできた。
77歳の指揮者は、
灰色の髪を振り乱し、
青空の深みから透けてくる、
そんな光を指揮棒に絡めとりながら、
一人踊っているように見えた。
外に出て、
林の中を歩くと、
痩せた冬グモが破れた網を修理しながら、
風を巻き込むような不思議な動きをしているのが目にとまった。
ああ、ここにもクモの小澤征爾がいる。
生命のダンスを踊っている。
どうして、こんなに美しいのだろう?
小澤やクモのような、格好いい踊りにはならないけれど、
いつか、私も私らしい最期のステップを踏んでみたい、
そんなことを今年のクリスマスには想ったのだ(笑)。
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2012/12/21
冬色のタイル
寒くなってきた。
手をポケットに入れる。
日向の石壁にあてる。
坂道にたまった落ち葉にうずめる。
それでも心は落ち着かない。
冬ばれの陽光は、なぜか心をそわそわさせる。
うす暗い灰色の朝
電車を乗り継いで、
廃校になった活動室に辿り着く。
スチームを付ける。
窓の外は曇り空、震える小枝。
そこに「わあ、あったかい!」
顔を赤くして、仲間たちが飛び込んでくる。
冬の寒さと
仲間たちの陽気さ
それがまじりあって、輝いている。
北風の吹く夜、
作業所の活動室に流れる
カップラーメンや焼きそばの匂い
仲間たちの一日の仕事の匂い
窓からは、
切り紙細工のような蒼い月、
星々の硬い光
にぎやかなルパン三世やパピーの曲が流れ、
手を叩きながらリズムをとり
絵を描いている仲間たち
冬、
私はそんなものに囲まれて
生きている。
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2012/12/18
ぬくもりの文字
これは、カエル、
ダンスするネコ?
隠されている文字は?
是!
これは、マヤ文明の壁画?
傘をさして、散歩するゾウ?
隠されている文字は?
無!
これは蜜多、
迷路の中を自転車で走るおじいちゃん
犬を連れて散歩するおじさん、おばさん
トンボもミミズも
迷路でウロウロ
これは波羅、
ロゼッタストーンのような文字が刻まれている
銀、梅、曇、嬉、K、ヒヤサン・・・
不思議な文字がピカピカ
これは顛倒、
べろを出した真や蝶ネクタイをした頁
イやリの足を従えて、至が散歩、
みんなバラバラで、一つ
これは僧提、
着飾ったマダムと痩せたおじさんのデート?
こんな風に仲間たちの般若心経が生まれていく。
難しい漢字もぬくもりの文字に変わってく。
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2012/12/14
般若心経プロジェクト
いま、しゃにむに取り組んでいることがある、
フェースを支えてくれている人たちや仲間たちと
般若心経の世界を表現しようという試みだ。
一人ひとりが般若心経の文字を自分流に描く
文字の大きさや形、色、材質も自由。
紐やチラシ、ビーズで文字を作ったっていい。
間違っていたり、読めなくったっていい。
書というより、アートっていう感覚で文字を表現するのだ。
それを切り抜き、みんなで描いた背景に貼り付け、巨大壁画にする。
一文字の大きさを平均20cmとして266文字を並べると、
3m×5mにはなってしまう。
完成イメージは、色彩の宇宙を漂う文字、
共に生きる大交響曲!(笑)
じつはこの構想は5年前からずっと考えていたのだが、
自分の中で踏ん切りがつかず、手を出しかねていたものだ。
理由はいくつかある。
宗教や私の想いの押し付けにならないか、
難解な般若心経の言葉や内容は、仲間たちには理解できないものではないか、
などなど・・・自分の中で整理がつかず、時間だけが流れた。
それが突然、「やればいいのだ」、
何かが落ちるように、すとんと気持ちが定まった。
年齢や障がいの有無を超えたフェース内外の人と
「一緒に描く行為」こそが、
私たちが生きる般若心経の世界なのではないか
と思えるようになったのだ。
というわけで、
大した設計図もなく表現工事に取り組んでいる。
仕上げは一応、来年の四月にした。
でも何年かかるかは全く分からない。(笑)
念のために、一言記しておくと、私は無宗教の人間だ。
でも、般若心経は時空を超えたタペストリーのように美しいと思う。
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