2012/10/02

ホワイトボードにふく風

金平糖(星型?)の頭をした人たちが
太鼓や鈴を持って踊りながら歩いている作品を覚えていますか?
頭上には、トランペット、音符、赤茶色の柔らかな時間が流れている・・・

「きょうのくすくす」の巻頭を飾った
りほちゃんワールド満開の作品なのですが、
そのりほちゃん、最近はことばの面白さに目覚め、
ホワイトボードの前に立っては
何やら歌を口ずさみながら文字を書き連ねています。
その文字やことばがとても面白い。



例えば、これ。
手提げバックに模様のように書かれた、
たいいくかん、オタソにょく、スープ・・・?
下の方から細い手が伸びて、クレヨンで文字を描いている!
ん~、これって何?
現在進行形で、見る者の中にも文字がイメージになって流れ出していきます。
意味なんか考えなくて、
飛躍することばの面白さを追っていけばいいのかしれないけれど
どうしても意味づけしたり、りほちゃんの心をのぞいてみたくなりますね。



これなんかは分かりやすい。
しもたまさもんたま
しゃぼんだま、しゃぼんだま
絵をみたら、ああなるほどねと微笑んでしまう。
山の上を飛んでいくシャボン玉・・・。
ホワイトボードに気持ちのいい風がふいているようです。



りほちゃんの中のことばやいろが
しゃぼんだまのようになって生まれているみたい。


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2012/09/28

割りばしとタコ糸でポロック!

「アートってなんなの?」とよく聞かれる。
私がいつも安易にアート!って口走ってるからかもしれない。
質問している人には、アートっていうものがとても権威的なもの、専門的なもので、
そんな簡単にアート、アートって騒がれちゃ困るっていう気持ちが見え隠れしたりする。
そんな時は、「アートって、その人がアートって思えば何だってアートに変わっちゃう。
自分が自分らしくなる、魔法のおまじないみたいなものかな」って答える。
ちょっと心に火がつき、楽しくなる、元気になる、それがアートなんだと思う。

そんなアートが生まれる瞬間を一つ紹介したい。
絵筆を持つことを断固拒否する仲間(Dさん)がいた。
絵筆を持つと、ポーンとほおり投げる。
上機嫌の時にはさっと紙に一筆、それで後は寝転がっていたりする。
で、ある時、たまたま彼の傍らにあったタコ糸を丸めて、
絵の具をといたトレーに浸し、紙に叩きつけてみた。
それを見ていた彼、面白そうと床から起き上がり、それを拾い上げて、
同じように絵の具に浸し、紙に叩きつけた。
飛び散る絵の具、奇妙な曲線のタコ糸の軌跡、指や足の跡・・・
いろんなものが紙に重なり合って交響曲のように鳴りはじめてていた。
彼、どんなもんだい!としたり顔。
ほー、こんな風にすると彼はアーティストになるんだと思い知らされた。

で、その後で考えたのが、もう少しこぎれいにアートはできないかな?ということ(笑)。
条件は、
「①既製の絵筆は断固拒否!
②絵の具を浸したタコ糸を紙に叩きつける行為=アート」という2つ。
試行錯誤の末に生まれたのが写真のようなしっぽ筆。



フェースofワンダーで生まれたオリジナル筆の第一号だ。
割りばしの先に20cm程のタコ糸を結びつけただけの筆だけれど、その効果は抜群。
しっぽ筆を持って糸を絵の具に浸し、ピシッピシッと紙に叩きつけたり、
そっと置いて紙の上でくねらせるだけ。それだけで、いろいろな線が生まれてくる。
線の上にさらに線を重ねていく。
そんな風に30分も遊んでいると、
既製の絵筆では描けない線群が繭玉か星雲のように生まれてくる。
そのアート感覚は、米の大家J.ポロックに通じる。



形や色を気にせず、ひたすらしっぽ筆で紙に叩きつける。
目を閉じてたっていい。
音楽をかけ、リズムに乗って強弱に叩いていると、体の中の生命のようなものが指先からしっぽ筆をつたって、紙にほとばしっていくのが感じられる。
ちなみに、しっぽ筆の生みの親Dさんのお気に入りのBGMは「きよしのずんどこ節」。
ずん、ずん、ずんどっこ!で線がリズムを刻んでいる。
そのせいか、Dさんのしっぽ筆アートは演歌っぽい。(笑)

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2012/09/25

森の中をあるくと

森は少しずつ秋の気配に変わり始めている。
くぬぎ林を歩くと、風が吹くたびに
落ち葉のかすかな音が話し声のように聞こえたりする。
この林の中で、
新緑の5月に草色のとてもきれいなヤママユガの繭を
見つけたことを思い出した。
あの繊細で柔らかな繭の中にいた生命は夏を超え、
また新たな生命を継いだのだろうか?
足もとの枯葉の中に
キノコやブナの実生の芽なんかを見つけると、
生命を紡いでいく揺籃のような森の存在に感嘆する。

森の中を歩くと、仲間たちのアートにも、
かけがえのない表現を紡いでいく森のような場所が必要なのだと思う。
学校を卒業すると仲間たちの多くは表現の場を失う。
残念ながら、いまの社会では仲間の表現を引き出し、紡いでいく場所はほとんどない。
仲間たちの中の表現のエネルギーはその行き場を失うのだ。
フェースは、そんな彼らの表現を紡いでいく森になりたいと思っている。
花々の受精を促す虫たちや風、
柔らかな水を保つ木々、
そんなものでできているアートの森になりたいと思っている。

そんな森が、世界(地球)の各地にできたら、どんなにいいだろう!



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2012/09/21

Yさんからの手紙

音を立てて大きな雨粒が路地を叩き始めた夕方、
手紙が届いた。
2週間前に仙台から、フェースofワンダーの活動を見学に来られたYさんからだ。

お母さんの背に隠れるようにして、仲間たちの活動を見ていた。
声をかけると、大きな目をくるくるさせて、うなずくばかり。
昼食後の話し合いでもあまり言葉を交わすことができなかった成人女性だ。
どんな印象を持たれたのだろうと気になっていたので、すぐに封を切った。

「1年半くらい前から、外の人とはほとんど会わずに引きこもった生活を続けていたので、
最初はとても緊張していましたが、フェースofワンダーのエネルギー、
K先生(まねきねこ)のアートに対する考え方を受けて、
とても前向きな意欲が湧いてきました。
絵を描くことはもちろん、生活全般に。
さっそくですが、先生に見ていただきたいと思い、私が描いた絵を送らせていただきました。
昨年から今年にかけて描いた絵です・・・・」

手紙と一緒に届いた絵は、素朴で柔らかな優しさがにじんでいた。
添えられていた文章もステキだった。

「何を描こうか迷っている時に、壁に貼っていた世界地図のポスターが目につき、大陸が牛に見えたので描いてみました」



「上手に塗ろうとしましたが、思ったとおりに行かず途中で嫌になりました。
でも、母に励まされ、開き直って何度もゴチャゴチャ塗るのを繰り返しているうちに、
また楽しくなってここまで描くことができました」



感想をメールで送ると、すぐに返事が返ってきた。
「仙台に帰ってから、さっそく母とアートの時間をとりました。
(初めて粘土をこねてみました)
フェースを見学させていただいた以前よりも、
絵に取り組む姿勢が自由に広がり、より楽しくなりました。
新しい生活がスターとした感じがします。
そして母が知り合いの親子に声をかけ、
来週、一緒にアートの時間を共有することになりました。
絵を描く仲間(神奈川の皆さんも含めて)ができてとてもうれしいです・・・・」

夜になっても雨は降り続いた。
窓を開け放ち、濡れた木々の肌を伝って落ちる雨を見ながら、Yさんの言葉を反芻した。
何をきっかけに引きこもるようになったのかは分からないけれど、
ゆっくり自分の歩幅で歩きだそうとしているYさんに、
私自身も勇気づけられていると思った。

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2012/09/18

くすくすの風

「くすくすミュージアム」がオープンして2か月がたった。
フェースブックやツイッターをやっていないので、
よこはちさんから時々、感想を見せてもらっては、
いろいろな人がミュージアム界隈を行き来し始めているんだと驚いたり、
嬉しくなったりしている。

私の周辺では、フェースの仲間たちや家族、友人が
週二回の更新を楽しみにしてくれている。
はじめて見た人からの感想は、
「ホッとするような癒やしの空間ですね」というのが圧倒的に多い。
「生活や仕事に疲れた人がほんの少し元気になったり、
勇気をもてたりするようなミュージアムにしたいね」
というのが私たちの想いだったから、
そんな願いが小さな風になって、吹きはじめたのかもしれない。

気になるのは、吹き始めた風が
人と人の間をいきかう自由な風になっているのだろうかってこと。
一方向に吹くだけの風は生きていない(扇風機みたいにね)。
いろいろな方向に吹き、ターンしては戻り、終息してはよみがえる、
そんな風をみんなで作りたいのだ。

それって、具体的にはどんな風なのだろう?
思いつくままにいくつかのイメージを挙げてみる。
●「くすくすミュージアム」は、普通のミュージアムのように
作品の質や技術の高さを基準に作品を紹介するのではない。
その手の権威や専門性なんか気にせず、それぞれがアートを語り、
楽しめる、そんな作品紹介をしていきたい。

●仲間の絵によって生まれる一人ひとりの開放感や元気感を
みんなで共有できる、そんな部屋をミュージアムのどこかに作りたい。

●まだ出会っていない人たちと交流を世界大に広げたい。
きっと世界のどこかには、同じようなアートの想い、
生きる想いを発信している人たちがいる。そんな人たちと出会いたい。

で、とりあえずは英訳の部屋の開設をめざしたい。
お金はもちろん払えないので厳しいけれど、
英訳ならボランティアで参加できるよという人も、
きっとどこかにいるはず。(いたら紹介してくださいね)

●さらに進めて、仲間たちとのワークショップ、
絵本やアートカード、ペンダントなどの共同制作・・・・
いろいろなことが頭の中を駆け巡る。

これが、くすくすの風なのかな?



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